映画、風が吹くときを見ました。
この作品を知るきっかけになったのは、いつも見ている映画紹介をしてくれるユーチューバーさんの動画。
その動画を見て「見てみたいなー」と、漠然と思っていたんです。
せっかくアマプラ会員になったということで探してみたらレンタル作品で発見。
無料で見られる作品ではなかったので若干悩みはしましたが、500円ということでレンタルしてみました。
平和ボケな恐怖
戦争を描いたアニメ作品ですが、ジオラマ(であってる?)とか実写が沢山盛り込まれた映像で見ていてとても面白かったです。
戦争当時の映像なんかもあって、それの使い方もこの映画の個性の1つだと私は感じました。
舞台はイギリス。
田舎に住む老夫婦が主人公。
ただ、老夫婦と言ってもおじいさん・おばあさんって感じでもなくて。
多分50代くらいなのではなかろうか…?
東西冷戦でバッチバチって感じの世界情勢のなか、いよいよ第三次世界大戦が始まり、イギリスに核爆弾が落とされ…。
っていうのが、大まかなストーリー。
ただ、戦争の様子や被ばくの様子が生々しく描かれるかと言えばそうではなく。
田舎町ゆえに直撃は避けられたものの、爆風の被害にあったこの夫婦の暢気すぎる姿をひたすら見ていく映画って感じです。
夫ジムは政治に関心が高いと言っているのですが、今の首相が誰なのか知らないとも言う。
妻のヒルダは新聞はゴシップ欄以外は読まないと言い切る人物。
この2人、とても仲が良い夫婦なのですが見ている世界がとても狭いのです。
爆風で全壊はまぬがれた家に住み続け、雨水を飲みながら新聞が届くのを待ち続け、牛乳配達が来ないことに文句を言っている。
「爆弾が落ちた直後だから新聞も1日くらい遅れるさ」と言っている様な2人なのです。
家の周り、美しい緑の景色は当然ながら焼け落ち黒ずんだ炭のような状態。
「焦げ臭くて肉が焼けたような変な匂いがするわ」と作中でヒルダがいうシーンがあるのですが、当人が気づいていないからこそ恐ろしく悍ましい描写だと感じました。
街の変貌を目の当たりにしても、変わらず家に住み続け、国の救助を待ち続け…。
その様をただ淡々と描き、視聴者はそれを見続けるっていう映画です。
これだけでも地味にメンタルにくるものがある。
私がこの映画内で私が1番気になったのが、第二次世界大戦についての2人の会話。
どうやらジムもヒルダも幼い頃に第二次世界大戦を経験しているようなのですが、2人そろって「あの時は良かった」と言っているのです。
なぜか記憶の中で素敵な思い出となっている戦争体験。
各国の指導者をヒーローとして語ってもいます。
日本で生まれ育った私としては、かつての戦争をそのように語っている言葉など聞いたことがありません。
というか、そういう記憶として創作の中で描かれることにもかなり違和感や驚きがありました。
でも、これは日本が敗戦国だからなのかもしれません。
イギリスでは「あんな時代もあったわね」的な見方をする人が居るのかもなぁ…と。
以前にヒトラーの歴史について学ぶことがあったのですが、ドイツではナチス政権の前半期については評価しているという声もあるのだと知りました。
この映画もイギリスで作られた物だし、日本という視点からでは分からない部分・想像できない感情もあるのだろう…と思います。
もしくは、作者の大いなる皮肉なのかもしれませんが…。実際のところどうなんだろうね。
調べてみたら作者も幼少期の頃に第二次世界大戦を経験しているようでした。
私としては皮肉でああいったセリフや描写を入れていたと思いたいのですが...。
さて、爆風を受け命は助かった2人ですが、当然のことながら被ばくしている。
さらに雨水を飲んだりなどしているので、どんどんと状態が悪くなっていきます。
その姿もなんとも緊張感なく描かれているのが恐ろしく感じてしまう。
これも日本人故なのかな?
2人の最期は言わずもがな。
見終えてどっと疲れる気持ちになる映画でした。
ただ、戦争被害とか戦争下の一般人を描いたアニメ映画という面では火垂るの墓より私はよっぽど好きでした。
あっちは心中ものだからそれが気持ち悪くてあんまり他の情報が入ってこないのよね…。
戦争って問答無用で悲惨で得る物のない破壊行為だと思います。
だからこそ、淡々とその被害を受けていく2人の姿が心に刺さるモノになっているように私は感じました。
あと個人的には海外で作られた戦争被害を描いた作品って初めて触れたので、そういう意味でも見て良かった作品だと感じています。
関心領域も気になっている作品なので、アマプラで探してみたいと思っている。
気軽に見てねとは言いにくい作品ではありますが、見て損はないと思った作品でした。
興味のある方は、ぜひ。
映画を紹介してくれる素敵ユーチューバーさん。